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トンボと裁ち落とし(塗り足し)って何?
―印刷に欠かせない存在を解説―

印刷における「仕上がりの美しさ」は、見た目だけでは語れない、見えない工程の積み重ねから生まれます。中でも重要なのが、デザインデータにおける「トンボ」と「裁ち落とし(塗り足し)」です。印刷業界では当たり前のように使われている言葉ですが、はじめて印刷に携わる方にとってはなかなか馴染みがないかもしれません。今回は、この2つがなぜ必要で、どのような役割を果たしているのかをわかりやすく解説いたします。

もくじ

トンボとは?

「トンボ」とは、印刷物を正確にカットするための目印です。別名「トリムマーク」とも呼ばれ、印刷データの外側に配置される十字や角の細い線を指します。

役割は3つあります。


1.断裁位置の基準線になる

印刷機では用紙に複数、面付けされることが多く、それぞれのデザインを決まったサイズにカットする必要があります。トンボはその断裁位置を差します。


2.CMYKの見当合わせ

フルカラー印刷ではシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色を重ねて表現します。トンボはそれぞれの色のズレ(見当ズレ)を補正するための基準にもなります。


3.デザイン確認のガイド

仕上がりサイズや裁ち落としなどを把握する上で、デザイナーや印刷オペレーターにとって重要な“目視ガイド”でもあります。


トンボは、サッカーで言うと「フィールドに引かれた白線」のようなもの。ゴールラインやペナルティエリアの線がなければ、どこがゴールか、どこから蹴るのか分からなくなりますよね。印刷においても、トンボがないと、どこで切るか、正しく位置合わせができません。

裁ち落としとは?

「裁ち落とし(塗り足し・ブリード)」とは、印刷物の仕上がりサイズよりも外側にはみ出すように背景や画像を広げる処理です。通常、上下左右に3mmずつの余白を設けるのが業界標準です。

 

どんなに高性能な断裁機でも、断裁時にわずかなズレ(0.5mm〜1mm程度)はつきもので、このズレによって、背景が仕上がりサイズぴったりで作られていると、断裁位置がずれた際に紙のフチに白い“余白”が残ってしまうことがあります。

裁ち落としをしっかり設けておけば、多少のズレがあっても背景がはみ出しているため、仕上がりに違和感が出ません。まさに“保険”のような存在なのです。

 

例えば、91×55mmの名刺を作成する場合、デザインデータは97×61mm(各辺3mm追加)にします。背景色や画像は97×61mmいっぱいに配置し、文字やロゴなどの大事な情報は91×55mmの内側に収めるのが理想です。

上記ような名刺の場合、左の作成例は青い背景が仕上がりサイズぴったりで作られているので、これでは裁ち落としが不十分です。右の作成例のように斜線部まで背景を追加する必要があります。

トンボと裁ち落としが無いとどうなる?

トンボや裁ち落としが不十分の場合、以下のようなトラブルの可能性があります。

 

・断裁ができない/ズレてしまう

トンボがなければ、どこを基準に断裁してよいかわからず、裁断ミスの原因になります。

 

・白フチが出てしまう

裁ち落としがないと、背景が足りずに仕上がりのフチに「意図しない白」が見えてしまい、見た目の印象が損なわれてしまいます。

 

・印刷所から修正依頼が来る

トンボや裁ち落としの不足は、印刷所にとっても大きなトラブルの要因になります。最悪の場合、データを再入稿していただくことになってしまいます。

印刷データ作成時のチェックポイント

・トンボ:内トンボ・外トンボ・センタートンボがそれぞれ付いているか

印刷物を正確に断裁するための基準線です。通常は、IllustratorやInDesignなどのソフトで自動的に付加する設定がありますが、その設定が有効になっているかどうかは必ず確認してください。

 

・裁ち落とし 各辺3mmずつ追加(上下左右)

背景やベタ塗りがある場合は、この3mmの塗り足し部分までしっかり背景が伸びているか忘れずに確認してください。塗り足しが不足していると、仕上がりの端に意図しない白フチが出てしまいます。

 

・データ形式 PDF/X-1a(またはIllustrator、InDesign形式)

印刷所に入稿する際のデータ形式はPDF/X-1aが推奨されます。この形式は、フォントの埋め込みや画像の解像度など、印刷に必要な要素を一括管理できるため、トラブルの発生を防ぐ効果があります。

Illustrator(.ai)やInDesign(.indd)などのネイティブ形式でも入稿可能な場合がありますが、可能な限り高品質な設定で保存し、印刷所の指定フォーマットに従って作成してください。

 

・重要な文字位置 仕上がり線から3mm以上内側に配置

断裁のズレによって、文字やロゴの一部が切れてしまうケースは少なくありません。こうしたトラブルを未然に防ぐためには、文字や重要なデザイン要素は仕上がり線から最低でも3mm以上内側に配置するようにしましょう。

まとめ

仕上がった印刷物だけを見ていると、こうした技術的な仕組みに気づくことはほとんどありません。しかし、トンボと塗り足しは、美しい仕上がりと正確な加工をするための、まさに“縁の下の力持ち”とも言える存在だと思います。

これから印刷物を作成するお客様や、クライアントに印刷データを依頼する方は、ぜひこの「トンボと裁ち落とし」をご理解の上で正しい入稿データの作成につなげてください。

 

印刷のこと、紙のこと、データのこと少しでも「どうしようかな」と思ったら、弊社、クサカ印刷所にお気軽にご相談ください。あなたの「わからない」を一緒に「カタチ」にするそんな会社でありたいと思っています。

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